I君のあっと言う間の住宅購入物語

 

第一章 社宅が壊される

 
I君は社宅住まい。その社宅は川崎市の大きな駅から徒歩 5分の 3DK。会社は駅から乗り換え無しの 30分。そして家賃はなんと数千円!
要は、”ものすごく古い”と言うことを除けば、贅沢な住環境にいた。その社宅が老朽化と資産整理のために取り壊されることが数年前から決定していた。
 
もちろん他の社宅へ移動することも可能。しかし、 I君は「どんな不便な場所に移動するか分からない」という、サラリーマンたるものごく当たり前のことを”避けたい→家を買えばよい”という、ごく単純な思考回路をたどって、住宅取得をなんとなーく考え始めていた。
 
近所のマンションを見て回ったり、チラシをパラパラと見たり。確かに、現在の駅の周辺には高級タワーマンションが立ち並び、選び放題。・・・が、到底買えるような金額ではなかった。当たり前だ。今住んでいる社宅と同じくらいの条件を希望しているのだから。
 
そんな I君の話を聞いたり、家のことについて相談にのったりしていたが、そもそも希望条件が予算に全く見合っていない。しっかり自己資金を貯めてもう少し先にするしかないね、という笑い話にしかならなかった。
 
こんな感じで、 I君もさほど本気ではないし、私も仕事というより、かるーい気持ちで話を聞いている程度だった。